令和のコメ騒動 農水省が招く飢饉
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キヤノングローバル戦略研究所
https://cigs.canon/article/20250425_8830.htm...
昨年夏、スーパーからコメが消えた。農林水産省が新米供給後には下がると言った米価は史上最高値に騰貴した。それでも同省はコメ不足を認めない。備蓄米を放出して米価を下げたくないからだ。昨夏は大阪府知事から要請されても「卸売業者がため込んでいるだけでコメはある」と強弁して備蓄米放出を拒否した。官邸から強要されしぶしぶ備蓄米放出に応じた今も同じスタンスを貫いている。
しかし、コメは不足している。2023年産米が減反と猛暑等で40万トン強不足した。それを端境期の昨年8~9月に24年産米を「先食い」したので、24年産米が供給される昨年10月から今年の9月までの供給量は端から40万トン不足していた。終戦後の食糧難の際も、1945年産米が大不作だったので翌年産米を先食いして飢えを凌いだ。24年10月から25年1月まで、民間の在庫量は前年同月比で43万~44万トン減少し、回復していない。
コメの値段は需要と供給で決まる。生産者米価が昨年7月の1万6千円から今年1月に2万6千円に上がったのは、供給が減ったという単純な経済原則からである。時が経っても前年同月比で同量が不足していることは、コメ不足がどんどん深刻化していることを意味する。10月時点の今後1年間の消費量550万トンに対する40万トンと1月時点の残り9カ月370万トンに対する40万トンでは、後者の不足の方が深刻である。だから米価は上昇し続けたのだ。
備蓄米の放出でも農水省は米価を下げない仕組みを考えた。一つは売却先を、消費者に近い卸売業者や大手スーパーではなく、備蓄米放出に反対しているJA農協とした。21万トンの備蓄米が卸売業者に流れても農協がその分、従来からの卸売業者への販売量を減らせば、市場への供給量は増えず価格は下がらない。もう一つは、一年後に備蓄米を買い戻す。今年産のコメが増産されて米価が下がることに対する防止策である。
(つづく)

https://cigs.canon/article/20250425_8830.htm...
昨年夏、スーパーからコメが消えた。農林水産省が新米供給後には下がると言った米価は史上最高値に騰貴した。それでも同省はコメ不足を認めない。備蓄米を放出して米価を下げたくないからだ。昨夏は大阪府知事から要請されても「卸売業者がため込んでいるだけでコメはある」と強弁して備蓄米放出を拒否した。官邸から強要されしぶしぶ備蓄米放出に応じた今も同じスタンスを貫いている。
しかし、コメは不足している。2023年産米が減反と猛暑等で40万トン強不足した。それを端境期の昨年8~9月に24年産米を「先食い」したので、24年産米が供給される昨年10月から今年の9月までの供給量は端から40万トン不足していた。終戦後の食糧難の際も、1945年産米が大不作だったので翌年産米を先食いして飢えを凌いだ。24年10月から25年1月まで、民間の在庫量は前年同月比で43万~44万トン減少し、回復していない。
コメの値段は需要と供給で決まる。生産者米価が昨年7月の1万6千円から今年1月に2万6千円に上がったのは、供給が減ったという単純な経済原則からである。時が経っても前年同月比で同量が不足していることは、コメ不足がどんどん深刻化していることを意味する。10月時点の今後1年間の消費量550万トンに対する40万トンと1月時点の残り9カ月370万トンに対する40万トンでは、後者の不足の方が深刻である。だから米価は上昇し続けたのだ。
備蓄米の放出でも農水省は米価を下げない仕組みを考えた。一つは売却先を、消費者に近い卸売業者や大手スーパーではなく、備蓄米放出に反対しているJA農協とした。21万トンの備蓄米が卸売業者に流れても農協がその分、従来からの卸売業者への販売量を減らせば、市場への供給量は増えず価格は下がらない。もう一つは、一年後に備蓄米を買い戻す。今年産のコメが増産されて米価が下がることに対する防止策である。
(つづく)


今回の米価上昇でコメ農家はやっと一息つけるとか農家は時給10円だとかという報道が行われている。しかし、何十年も前から1ヘクタール未満の零細な兼業農家の所得はマイナスだった。確かに、これらの農家の農業収支は今回の米価高騰でプラスになった。しかし、これまで町で高いコメを買うよりも自分でコメを作った方が安上がりなので、赤字でもコメを作り続けてきただけだ。減反・高米価政策は本来、市場から退出すべきゾンビ農家を温存してきた。欧米ではパートタイム農家と呼ばれる零細規模の兼業農家はコメ農業の担い手ではない。フランスでは農政の対象ですらない。
米価が1万5千円だった2020年でも、20~30ヘクタール層では877万円、30~50ヘクタール層では1,227万円、50ヘクタール層では1,881万円の所得となっている。1ヘクタール未満層は戸数ではコメ農家の52%を占めるが面積では8%を占めるに過ぎない。逆に、30ヘクタール以上層は戸数では2.4%だが面積では44%も占めている。現在のコメ作の主体は大規模な主業(専業)農家や法人が担っている。これらのなかには今回の米価高騰で輸出ができなくなり困難を抱えている農家もいる。かれらは、米価は1万円でよいので、欧米のように直接支払いに移行すべきだと主張している(図1参照)。
これほど米価が上がり国民を苦しめているのに、自民党から共産党まで米価を下げるべきだと主張する政党はいない。農家票が欲しいのだ。もう農家だから貧しいということはない。日本から貧農は1960年代に消滅している。減反は財政負担をして生産を減少させて米価を高める政策である。関税は国際価格よりも高い価格を消費者に払わせる政策である。立憲民主党は食料品の消費税のゼロ税率を主張するが、減反・高米価政策、農産物関税政策を止めるとは言わない。支離滅裂だ。水田を票田として大切にする政治家や政党は多いが、こども食堂やフードバンクを利用している人のことを考える政治家はいない。
私の農水省の最初の先輩は柳田國男である。農民を貧困から救うために彼は活動した。しかし、米価を上げて農家所得を増やすことは貧しい国民消費者を苦しめるので、柳田が断固として拒否したことだった。彼の影響を受けた後輩で「貧乏物語」の著者として有名な河上肇は、「一国の農産物価格を人為的に騰貴せしめ、之によりて農民の衰頽を防がんとするが如きは、最も不健全なる思想」と主張した。農民を救うために柳田は規模拡大、生産性向上を主張する。価格を上げなくてもコストを下げれば所得は増加するからだ。柳田の頭の中には常に〝経世済民〟があった。残念ながら、今の農水省の頭には既得権者の利益しかない。
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