6頭は死亡、3頭は定着せず、絶滅を食い止められるのか
米国に生息するアメリカアカオオカミ(Canis rufus)は、世界で最も絶滅に近いオオカミだ。1980年には野生で
の絶滅が宣言され、その後、飼育下の個体を野生に放つ取り組みが続けられてきた。
2022年2月~4月、米国魚類野生生物局が長年取り組む回復プログラムの一環で、合計10頭のアメリカアカオオカミ
が、飼育下からノースカロライナ州の野生動物保護区に放たれた。これによって、野生下にあるアメリカアカオオカ
ミの数は、ほぼ倍の20頭になった。
この取り組みは、センサー付きカメラを通じて世界中に配信され、自然保護団体はこれを回復プログラムの「新た
なスタート」と讃えた。近年、個体数が減少し、回復プログラムは窮地に陥っていたからだ。
しかし、絶滅寸前の動物の回復が簡単ではないことはよく知られているとおりだ。今年野生に放たれた10頭のオオ
カミは、6頭が死に、3頭が飼育場所に戻ってきてしまい、残念な結果に終わった。
「野生動物の保護がとてつもなく困難であること」を思い知らされたと、アメリカ動物園水族館協会でアメリカアカ
オオカミ保護に携わるレジーナ・モソッテ氏は話す。
一度は100頭を超えるまで増えたが
アメリカアカオオカミの再導入が始まったのは、今から35年前の1987年。飼育下で生まれたアメリカアカオオカミ
8頭が、ノースカロライナ州に放たれた。多難なスタートだったが、研究者らが知見を蓄えるなかで、2012年には個体
数が100頭を超え、複数の群れを作るようになった。この状態はそれから数年間続いた。
ところが、この地域でコヨーテが増えたことが転機となる。若いアメリカアカオオカミは大きさや色がコヨーテに
よく似ているため、射殺される件数が増えたのだ。規制に対する地元の反発や、プログラムの縮小などもあり、オオ
カミの個体数は急激に減っていった。
2022年に放たれた10頭のアメリカアカオオカミのうち、3頭は射殺された。現在、法執行機関がその調査を進めて
いる。射殺の事例は数百を数えるにもかかわらず、20年以上、アメリカアカオオカミの密猟で起訴された人はいない
(アメリカアカオオカミは連邦保護動物であり、殺せば高額の罰金を科される可能性がある)。
また、少なくとも2頭は車にひかれた疑いがあり、1頭の死は原因不明だ。ほかの3頭は飼育下に戻ってきたが、そこ
に至るまでの行動は、野生で生き延びられるのか不安を抱かせるものだった。
最後の1頭は行方不明だ。首輪につけたGPS追跡装置が機能しなくなっており、死んだのではないかと見られている。
続く→
https://news.yahoo.co.jp/articles/bccad8c5f8367989290ae...
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