ウクライナ東部の最前線
黒く濁ったぬかるみに足首までつかりながら、ウクライナのゼレンスキー大統領は自国の軍隊とともに移動する。
1列になり進んでいくのは、入り組んだ塹壕(ざんごう)やトンネルだ。
これらの施設からなる緊迫感に満ちたこの最前線は、同大統領の国の東部に位置している。
感覚としては現代というよりも20世紀初頭の第1次世界大戦に近い。疲弊し、緊張状態にある兵士たちがライフルを握りしめて大統領の周りを囲む。身を隠すところのない一帯へと出ようとして、緩衝地帯に動きがないかをつぶさに観察する。
狙撃手が発砲の機会をうかがっているのはわかっていると、ウクライナの当局者は語る。これらの狙撃手を訓練しているのは、おそらくロシア人だという。今年に入り射殺されたウクライナ軍の同僚の数は、すでに20人を超える。
ロシア軍がウクライナとの国境に大挙して集結しているのを受け、米国と北大西洋条約機構(NATO)の同盟国は
ウクライナを政治的、軍事的に支えると宣言。ゼレンスキー氏はこれらの国々に対し、支援の強化を強く求めている。
しかし米国と西側の同盟国との関係が一段とぎくしゃくする中、ロシア軍が国境を越えて活動する様子が再び確認されるようになり、戦争が再開するのではないかとの懸念が浮上した。
ロシア政府はこうした軍の動きについて、ロシア国内で実施していると説明。計画された軍事演習の一環であり脅威はないと主張する。しかし、冒頭の最前線でゼレンスキー大統領はCNNの取材に答え、ロシアの侵攻は極めて現実味があり、ウクライナはこれに備えていると明言した。「当然我々はそれを認識している。2014年から、毎日そうした事態が起こりうることを認識している」「彼らにはその用意があるだろうが、我々も準備はできている。こうして自分たちの国土、領土にいるのだから」
ウクライナ軍の最高司令官を務めるルスラン・コムチャック中将がCNNに明らかにしたところによると、推定5万人のロシア軍部隊が現在国境地域とクリミア半島に集結している。加えて、ロシアの支援する分離独立派少なくとも3万5000人がウクライナ国内の反体制派支配地域にいるという。
「もし彼ら(米国)がウクライナをNATOに加盟させるつもりなら、直接そう発言し、行動に移さなくてはならない。言葉だけではなく」しかし、そうなる可能性は低い。ウクライナをNATO加盟に近づければロシアがそれに反発し、より広範な紛争へ発展しかねないとの懸念があるからだ。
「しかし今何が起きているのか? 我々はここで何をしているのか? 我が国民はここで何をしているのか? 彼らは戦っているのだ」最前線で、ゼレンスキー氏は戦闘で倒れた兵士を悼んで1分間の黙祷(もくとう)をささげた。
NATOに加盟しようとしまいと、これがゼレンスキー氏の国の現実だ。ウクライナは紛れもなく戦争状態にある。
https://www.cnn.co.jp/world/35169229.htm...
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