USAID(米国国際開発庁)の解体は、単なる組織の統廃合にとどまらず、国際社会、特に開発途上国に多岐にわたる
深刻な影響を及ぼしている。
特にアフリカや中東などUSAIDの支援に大きく依存していた地域では、食糧危機、感染症(HIV/エイズなど)の蔓延、
基本的な医療・教育サービスの停止など、人道状況の深刻な悪化が始まっている。イラクやケニアで年間数億円規模
の人道支援プロジェクトが継続困難になった。
アメリカが対外援助を縮小する一方で、中国は「一帯一路」構想などを通じて開発途上国への支援を積極的に拡大。
これにより、アフリカを中心に中国の経済的・地政学的影響力が一層増大し「債務の罠」といった問題も懸念される。
開発援助は、アメリカの国際的な影響力や好意を構築する上で重要な「ソフトパワー」の一環で、USAIDの解体は、
そのソフトパワーを大きく損なうことになった。
USAIDは、開発途上国のインフラ整備や産業育成にも貢献してきたが、支援が途絶えることで、これらの地域の経済
成長が鈍化し、貧困問題の解決が遠のいた。
日本企業を含む海外企業の投資負担が増加し、新規参入が難しくなる恐れがある。
日本の医療機器メーカーなど、USAIDの資金提供を受けた病院建設や感染症対策プロジェクトで役割を果たしてきた
企業にとっては、ビジネス機会の減少となる。
USAIDは民主主義の促進、透明性のあるガバナンスの構築、法の支配の強化などにも取り組んできた。これらの支援
が停止することで、開発途上国における民主化プロセスが後退したり、腐敗が進んだりする懸念がある。
言論の自由や情報へのアクセスが制限される地域では、情報操作を図る外国勢力の影響工作の対象となる懸念も。
USAIDの解体は、単なる財政支出の削減にとどまらず、アメリカの国際社会における立ち位置、開発途上国の未来、
そして国際協力のあり方そのものに大きな変化をもたらす、極めて深刻な問題であると言える。
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