イギリスの名門自動車メーカー、ジャガーに海外メディアの注目が集まっている。2025年4月には月間欧州販売台数はわずか49台で、前年同期比97.5%減を記録したと話題になった。背景にはガソリン車を全て廃止し、EVに全リソースを投入する極端な経営戦略がある――。
ショッキングな数字が大々的に報じられるようになったのは、今年7月前後のことだ。
米自動車ディーラー向けメディアのCBTニュースが欧州自動車製造業者協会(AECA)のデータを引用して伝えたところによると、ジャガーの欧州での新車登録台数は今年4月、わずか49台のみであった。前年同期には1961台を販売しており、97.5%減という壊滅的な数字だ。
年初からの累計でも、1月から4月までの販売は2665台にとどまり、前年同期から75.1%も落ち込んでいる。その後も状況に目立った改善はなく、5月も前年同期比93.6%減であったと米カー・スクープ誌が報じている。
長期的な推移を見れば、事態の深刻さはさらに際立つ。CBTニュースによれば、ジャガーの世界販売台数は2018年の18万833台から、2024年度にはわずか2万6862台にまで減少。たった6年で販売台数の85%が消えてしまった。
本国のみならず、アメリカ市場も同様に厳しい。カー・アンド・ドライバー誌は、2023年のジャガーの米国販売がわずか8284台だったと報告している。2017年の3万9594台から約80%も減った。市場シェアは0.05%に過ぎず、かろうじて存在を保っている状態だ。
販売数低下の原因は、ジャガー経営陣の極端な経営戦略にある。
同ブランドは昨年、ブランドイメージを刷新すべく、これまで販売していたガソリン車全モデルの撤廃を決定。さらなる高級化を果たしたEVモデルのみのラインナップへシフトを図っていた。BMWやアウディがガソリンモデルとの併売を続けるのに対し、新モデルが揃うまでは車両の製造を一切停止するという非常に危うい戦略だ。
カー・アンド・ドライバー誌はこの詳細を、昨年10月に伝えている。ジャガーは販売中だった6モデル全ての生産停止を発表。これには、セダンのXEとXF、クロスオーバーのE-PaceとI-Pace、そしてスポーツカーのF-Type、そして量販型SUVのF-Paceが含まれる。I-PaceのみがEVであった。同年末までに生産終了するとの発表を受け、業界に衝撃が走った。
英BBCのトップギア誌はこの動きを、同ブランドの「防火帯」戦略であると紹介。あたかも火災の延焼を防ぐ空白地帯のように、従来の「準高級」ブランドと新しい超高級EVブランドとの間に意図的な断絶期間を設け、過去のイメージを完全に焼き切って生まれ変わる意図だ。ポルシェやベントレーと競う10万ポンド(約2000万円)以上の価格帯を狙うため、あえて製品を発売しない期間を設けるというわけだ。
ただし、評判は芳しくない。米技術解説誌のポピュラーメカニクスは、「近年の自動車業界でも最大級の失態の一つ」と断じた。前述のように新車販売数が97.5%減を記録したほか、ブランドイメージの低下を受け、中古車販売も9%減少している。さらに、記事によると「記録的に低い消費者信頼度」を観測するなど、ブランドイメージの毀損は明らかだ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/64ef454ea1811dff2a5f2...
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