■フランス征服の戦利品としてイギリスが接収
イギリス・ロンドンの中心部に構える、大英博物館。エジプトのミイラや死者の書、イースター島のモアイ像など、収蔵
数は約800万点といわれ、世界最大規模のコレクションを誇る。だが、そのコレクションが論争の火種になっている。
世界中からの略奪品を無数に含むこれら収蔵品は、本当にイギリスの所有物なのだろうか? 目下の話題は、展示の目
玉のひとつであるロゼッタストーンだ。
高さ1メートル少々のこの石版は、サイズ以上の歴史的価値を有する。3つの言語で同じ内容が併記されていたことから、
ヒエログリフをはじめとする古代エジプト言語の解読作業に劇的な進歩をもたらした。いまでも暗号解読や翻訳の代名詞だ。
石版は18世紀終盤、ナポレオンの遠征軍がナイル川河口で発見し、フランスの手に渡った。その後、フランス征服の戦
利品としてイギリスが接収し、現在でも大英博物館に展示されている。
かつては戦勝者の勝利の証として、文化財の持ち出しがごく当たり前のように行われてきた。だが、近年では元来の所有
地に戻すべきだとの議論が高まっており、ロゼッタストーンもエジプトに返還されるべきだとの論調が高まっている。
しかし、返還をめぐる状況は複雑だ。専門家は、ロゼッタストーンの返還が実現すればそれを皮切りに、「パンドラの箱」
が開くと指摘する。収蔵品の大放出へとなだれ込むシナリオが危惧されている。
■フランス・マクロン大統領の演説から始まった
きっかけは2017年、フランスのエマニュエル・マクロン大統領による演説だった。
返還の是非をめぐる議論が盛り上がるなか、マクロン氏はアフリカの文化財が「私的コレクションやヨーロッパの博物館
のみに留まるべきではない」と明言。これらの文化財を「ダカール、ラゴス、コトヌーで見たい」と表明した。
これを受けフランスでは、専門家らによる検討委員会が結成。アフリカ美術品の返還に関する具体的な議論が動き出した。
影響はフランス国内に留まらず、ヨーロッパの広い地域で返還に関する議論が加速する。それまで返還を拒んでいたヨーロ
ッパの博物館・美術館らに激震が走った。
ニューヨーク・タイムズ紙のサージ・シュメマン編集委員は同紙の論説を通じ、返還には双方に利があるとの見解を示し
ている。
氏は、略奪品は「ヨーロッパにとっては植民地時代の暗部」であり、「アメリカにとっては人種主義と奴隷制度の遺産」
にすぎないと述べている。一方、略奪された国にとっては「国家のアイデンティティと文化の問題」であるとの指摘だ。
■中国の影響力を排除したい政治的な思惑
続きは→
https://news.yahoo.co.jp/articles/21a804d3ed518b1741061...
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