コラム:トランプ関税による「貿易戦争」の行方、人民元相場に注目
https://jp.reuters.com/opinion/forex-forum/F7LLABGWMN... トランプ米政権が中国からの輸入品に飛び抜けて高い関税を課すことに中国政府がどのように対応するかは、
中国のみならず、生産が集中する中国への依存度を低下させるために代替生産地として選ばれたアジアの「プラスワン」諸国や、世界の市場全体にとっても、極めて重要になるだろう。
米国が中国からの輸入品に課す関税の税率は現在、合計で54%となった。
仮にこの関税が長期にわたって据え置かれれば、
長く続いている不動産危機への対処や、消費のてこ入れ、軍事力の強化、多様な投資の資金調達といった中国政府の取り組みを妨げる公算が大きく、中国政府に金融面で打撃を与えるだろう。
そして第1次トランプ政権下での貿易戦争とは異なり、中国政府は関税の衝撃を和らげるためにアジアのプラスワン諸国を経由した迂回輸出と迂回投資に依存することはできない。
プラスワン諸国もまた、懲罰的な関税により打撃を被っているためだ。
例えばベトナムの場合、米国への輸出品に課される関税の税率は中国よりも高い。
こうした状況により、中国政府がトランプ政権の関税措置に対処する上で、通貨の切り下げは多分、中国が行使できる最も強力な手段になるだろう。
ただ残念ながら中国政府にとって、その戦略はリスクに満ちあふれている。
仮に人民元相場を急速に切り下げれば、国内外の投資家が中国から資金を引き揚げて大規模な資本流出を引き起こす可能性がある。
そうなれば国内の資産価格が大きく下落し、金融市場は不安定な展開となるだろう。
また人民元相場の下落は、他のアジア諸国に自国の競争力を維持するための自国通貨切り下げを強いる恐れがある。
そうした状況は、「近隣窮乏化政策」による通貨の切り下げ合戦を誘発する可能性もある。
こうした中、中国政府がさらなる景気刺激策を打ち出す余地は既に狭まっている。
今後は恐らく、追加の政策金利引き下げと流動性供給が行われるだろう。
しかし本格的な財政出動を伴う経済対策はさらなる国債の発行を伴う。
中国の財政赤字は拡大しており、追加の国債発行により財政は一段と悪化することになる。
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